私の教室では、書の技術をお伝えすることはもちろんですが、ただ「先生の言う通りに書く」ことを目指しているわけではありません。
私は、生徒さんに「こうしなさい」「ああしなさい」と一方的に決めることはしません。
その代わり、文字の形や筆の使い方について、
「こうすると、こういう効果があります」
「こういう考え方もあります」
「私はこうすると、よりよくなると思います」
というように、できるだけ理由や考え方も一緒にお伝えします。
その中から何を選ぶのか、どうしていきたいのかは、生徒さん自身に考えてほしいと思っています。
もちろん、「何でも自由に書いていい」ということではありません。
書には、筆の扱い方や文字の組み立て方、線と線の関係など、考えるための「理(理論・理由・理屈)」があります。古典から学べることもたくさんあります。
そうした知識や技術を知ることで、自分の書きたいものを考えたり、選んだりすることができるようになると思っています。
字を上手に書けるようになりたい人。
好きな字を書けるようになりたい人。
作品を書いてみたい人。
展覧会に出してみたい人。
ただ書く時間を楽しみたい人。
書を通してやってみたいことは、人によって違います。
だから私は、全員を同じ方向へ連れていくことよりも、その人が望むところへ進んでいくための手助けをすることが、先生という仕事の役割だと考えています。
必要なことはきちんと伝える。
考えるための材料も渡す。
迷ったときには一緒に考える。
でも、最後に選ぶのは、その人自身。
書が上達することも、作品をつくることも、書くことを楽しむことも。
それぞれの「やってみたい」に向かって進んでいけるように、私はそのための手助けができる先生でありたいと思っています。
