字がきれいになる
毛筆と硬筆をバランス良く学ぶことで普段の字もキレイに書けるようになることを目指します。
毛筆ではトメ・ハネ・ハライなど一画一画細部までゆっくりと学ぶため、しっかりと身につけることができます。
硬筆では毛筆で学習したことを生かしながら、改めて学習指導要領に沿って文字構成や配置のルールを学びます。
ただお手本を見て模写をする学習だけではなく、文字構成のルールや配置を学ぶと共に、個々の今の筆跡の特徴やクセを見つけて改善していくことで、その子らしいキレイな字を目指します。

書き順も含め、漢字を正しく覚えられる
毛筆は一画一画ゆっくり丁寧に書くので、文字を細部まで正確に覚えます。
画数が多く曖昧になりやすい漢字も細かい部分まで覚えており、誤字となることが少ないです。例えば、次の画像は「声」という漢字を間違えています。漢字のおおまかなイメージは覚えているのですが、実際書いてみると何か違う・・・。
毛筆ではゆっくり線一本・点一つをしっかり学ぶので、そういった間違いはとても少なくなります。
また、字を整えるにあたって書き順もとても重要なため、書き順も含めて漢字を正しく覚えることができます。

集中力が高まる
毛筆は途中で失敗しても書き直すことができません。そのため、一字一画に神経を集中させて書かなければなりません。書く文字や画数が多くなればなるほど、より集中力が必要となります。
当教室では半紙は毎回お教室で決められた枚数をお渡しさせていただいています。限られた枚数にすることで「間違えたら書き直せばいいいや」という考えを持たないようにし、3枚ずつ3回に分けてお直しをすることで短時間集中力を高めるようにしています。

姿勢が良くなる
毛筆で字を書くにあたって、はじめに気を付けることは筆の軸をまっすぐに立て、肘は机につけないということです。すると必然的に背筋は伸びます。
そして毛筆で整った文字を書くためには、まっすぐな線をひくこと、中心が通った配列にすることが必要になります。そのためには体と目線はまっすぐ、そして腕を大きく動かせることが大切です。
毛筆は硬筆のように手首から先で書くのではなく、腕全体を使って書きます。猫背や前のめり、背もたれに寄り掛かった姿勢では毛筆で文字を書くことはできません。
毛筆を通じて正しい姿勢を知り、身につけることができます。

脳の休ませ方がわかる
毛筆は一画一画全てにおいて気を抜かずに書きます。書き直しもできないため、自然と「今だけ」に集中して取り組むことになります。
今だけに集中することは、頭の中にあるストレスや雑念と距離を取ることができ、脳を休ませることができます。
定期的に集中する習慣をつけると脳が集中することを覚え、他の事でもスムーズに集中状態を作り上げることができます。

和の心や文化に触れる
「字は体を表す」「書は心画なり」「書は人なり」などという言葉があるように、古くから伝わる禅の教えでは「書は自分の性格や本質を表す」と考えられていたそうです。
確かに全く同じ筆跡を持つ人は居ません。書は日本人の気質や心を大切にしてきた文化です。
書写は古来からなされてきた日本の伝統的教育で、それは単純に読み書きを習うということだけではなく、起筆運筆収筆からとめはねはらい、折れ、閉じる開けるなどを繰り返し練習することで、まじめで規律正しい日本人の国民性を作り上げてきたものではないでしょうか。
また、文字の構成や配置の面においても、周囲とのバランスなどはそのまま人や社会の中であるべき姿に当てはめて考えることができます。
課題の文字や言葉は、季節の言葉や文が使われることも多く、和の文化に触れることができます。
現在は毛筆を使うことはほとんどなくなり、デジタル化により硬筆で手書き文字を書く機会すら減っています。ですが、だからこそ手書き文字には新しい価値が生まれていくと思います。
毛筆はアートやデザインとしても世界中で人気が高く、また、グローバル化が進むからこそ日本の文化を学んでおくことにも価値があります。

自分と向き合う時間を過ごし、落ち着きを身につける
日常生活の中では様々な音に囲まれています。ゲーム機やタブレットなどに触れる機会も多い中で、毛筆を通じて静かな空間と自分と向き合う時間を取り入れることにより、気持ちが落ち着き、安定した心を身につけることができます。
「毛筆はゆっくり丁寧に書くこと」といいますが、これは全て一定のリズム・強弱で書くということではありません。ゆっくり丁寧に書く中でも横画は「トン・スー・トン」右払いは「トン・スー・グッ・スー」などのリズムや強弱があります。
リズムと抑揚をつけることで字に命が宿り、一層その人らしい文字になります。文字を書くリズムや呼吸を身につけることで、他の日常行動においても落ち着いたリズムが身に付きます。
また、書は人と競うものではなく、自分と向き合うことだと思っています。自分と向き合うことにより、強くまっすぐな心を身につけることができます。

バランス感覚が養われる
岡本太郎の名言の一つに「字は絵だろ」というものがあり、字と絵の表現はもともと同じものだと考えていました。
文字は物の形をかたどって作られた物も多いです。絵も字も、書くにあたってはバランスが大切です。
中心が通っているか、等間隔になっているかなど一字の中だけではなく、他の文字との調和(バランス)も整える必要があります。
またお手本を見て書くことにより模写力が上がります。書は言語を用いる芸術活動です。字が上手い人は絵も上手い、絵が上手い人は字も上手いと言われるのは、両者に共通している部分が多くあるからだと思います。

考える力
毛筆ではお手本を見て自分の文字を書き、その後「お手本と自分の文字が何が違うのか」「どこがおかしいのか」「文字の全体のバランスが違うのか?」「空間はどうか?」「線質は同じか?太いか?細いか?」「文字間はどうか?」など、一緒に文字を観察して分析します。そして先生と話したことを念頭に再度書きます。
お習字をする中で「計画→実行→見直し・分析→修正→実行」という作業工程を繰り返すことにより、他分野においてもこのような作業遂行能力が発揮できるようになります。
また、漢字は常用漢字だけでも2000以上あります。
一つ一つ形を覚えていたらキリがありません。
文字の形にはルールがあるので、学習したことを生かして他の字形にも応用するという「応用力」も養います。

自己肯定感が高まる
文字を書くということは身近な自己表現です。「文字を書く」ということはできるので、初回から「全然できない」という感覚は持たず、リラックスして取り組むことができます。
そこから課題が与えられ、「ここを直そう」という意識を持ち、練習し、以前より変化・成長した自分の字を見たり、褒められることで自信や達成感を持つことができます。
また、段級を取得したり、月刊誌の写真版に掲載されることで自分の文字(=自分)が第三者の目に触れ、評価されているということが実感できます。
字がキレイであることに否定的な言葉をかける人は居ません。特技を持つことや周囲の人からの肯定的は評価は自信に繋がり、自己肯定感を高めます。
