字は人なり

「字は人なり」という言葉を聞いたことがあると思います。

字はその人を表すーー私もそう考えています。
筆跡心理学では筆跡には書き手の性質や行動傾向が表れると言われています。

こちらの意味もありますが、今回は「字を人間に例える」ということです。

指導をする中でよく人間に例えてしまいます。

口が酸っぱくなるくらい言い続ける「筆を立てて書く」ということ。

毛筆というのは一本の筆で細い線や太い線を書き分けます。
柔らかい毛の集まりで線の太さや強弱を出すためには、筆を立てる必要があります。
ただ「筆を立てて書きなさい」「筆は立てて書くものなのよ」と言うだけではつまらないので、少しでも記憶に残るように「筆を足だと考えてごらん」とお話ししています。

「足首より上の部分(軸)が倒れていたら、背伸びできないよね?」
「つま先立ちで歩いたり、背伸びの高さを加減するには軸がまっすぐ立っていることが必須だよね」

「筆の穂の部分は足首より下の部分というようなイメージで筆を使ってごらん」と。

傾いて見える字については、体幹を通す(中心を通す)イメージでとお話したりします。
スポーツやダンスをやっているお子さまなどは特にピンとくるようです。

長く書くべき縦線や左右に開く線などを短く書いてしまうクセがある場合は、「モデルさんとか手足が長いと美しく感じるよ。でも異常に長いと宇宙人みたいだよね。人が美しいと感じるバランスは自然の中から見つけるといいよ。」

ただ「もう少し長く」「もっと短く」「このくらいの角度で」「ここはこう」などと話しても記憶に定着しませんし、正確には伝わりにくいです。
5万以上あると言われている日本の文字です。この字は上手に書けるけど、この字は習ってないから上手に書けない、では指導に問題がある!といつも考えています。
理解して自分の意思で自分の書き方に反映させないと、すぐに書き心地の良い元の自分の字に戻ってしまうので、何とか記憶に残り、「そう書こう」と思ってもらえるように試行錯誤しています。