私は、書の指導において、「理論・運動・道徳」の3つの視点を大切にしています。
これは、3つの柱が同じ高さで並んで立っている別々のものではなく、順番を持ってつながる“ひとつの学びの流れ”です。
① 理論(基準をつくる)
まず最初に「理論」で、整って見えるための基準を学びます。
- 軸とは何か
- 左右バランスとは何か
- 余白とは何か
これにより、「なんとなく変だったもの」が「どこを見ればいいか」に変わります。
理論の役割は、「見るための目をつくること」です。
② 運動(ズレを見つけ、身体で修正し、回路をつくる)
次に「運動(身体)」です。
ここでは実際に書くことで、理論との違い=ズレを見えるようにし、そのズレを身体で修正していきます。
この繰り返しによって、脳の中に「正しい動きの回路」が少しずつ形成されていきます。
- どこが重いのか
- どこが傾いているのか
- どう動かせば整うのか
最初は意識しないとできなかった動きが、繰り返すことで自然と再現できるようになります。
運動の役割は、「ズレを発見し、身体の反復によって正しい動きを回路化すること」です。
③ 道徳(書を通じた在り方の形成)
最後に「道徳」です。
ここでいう道徳は、良し悪しではなく、書を通して育つ姿勢や在り方を指します。
- 一画を丁寧に扱うこと
- 急がずに向き合うこと
- 形だけでなく心を整えること
書は単なる技術ではなく、その人の在り方が表れます。
だからこそ、整った字を目指す過程そのものが、人としての姿勢を育てます。
道徳の役割は、「技術を在り方として定着させること」です。
3つの流れの全体像
理論で「基準」を知り、
運動で「ズレを見つけ、身体で修正し、回路をつくり」、
道徳で「在り方として定着させる」。
指導の本質
「なんとなく変だけどどこが変かわからない」「どう書けばいいかわからない」という状態は、技術不足だけではなく、「見る順番」と「整える順番」が整理されていないことが原因だと思います。
この3つの流れを通して、自分の力で整った字に近づける状態をつくることを目的としています。
