鉛筆を「ポーン」、バッグを「ドサッ」、「ドアを「バタン」……書道と普段の動作

書道と、普段の動作のちょっとした共通点

教室で子どもたちを見ていると、ときどき気になることがあります。
鉛筆や消しゴムを使い終わると、机にポーンと投げるように置く。
筆をポンと放す。
鞄をドサッと落とすように置く。
ドアをバターンと閉める。

もちろん、わざと乱暴にしているわけではないと思います。

「使い終わったから、手を離した」
きっと、それだけだと思います。

「そんなこと、いちいち気をつけなくてもいいじゃん。」
「めんどくさい。」
「急いでる。」
そう思う気持ちも、分かります。

毎日の生活で、一つ一つの動作を全部丁寧にすることは確かに大変です。

でも、私は普段から、動作の最後を少し意識しています。
たとえば、ドアを閉めるとき。
私のドアの閉め方は、途中で手を離して勢いで「バタン」と閉めるのではありません。
ドアが動いている間は手の力を抜いて、その動きに任せています。
そして、最後に手を添えて、ドアが閉まるところで静かに止めます。

物を置くときも、手からポンと放すのではなく、物が机に着くところまで手を動かして、そこで手を離します。

ほんの一瞬のことです。

書道でも「最後」が大切

実は、書道にも同じようなところがあります。

たとえば、筆の「ハネ」。

最後に「ピョン!」と筆を跳ね上げればいい、と思ってしまうかもしれません。
でも、本当はそうではありません。
一度しっかり止まったあと、そこからほんの数ミリでも線を引き、その線の先から筆を離していきます。
「止まって、離す」ではなく、止まったあとも、最後まで自分の手を動かしています。

「払い」も同じです。

最後まで筆を自分で動かしながら、少しずつ力を抜いて、紙から筆を離していきます。
書では、線の途中だけでなく、線が終わるところも大切なのです。

なので、もちろん意識も最後まで残します。

「最後まで自分で動かす」

だから、普段の動作でも、「最後まで自分で動かしてみようね」と子どもたちに伝えることがあります。

鉛筆なら、「ポイッと投げないで、机に置くところまで手を離さないよ」
ドアなら、「バタンって離さないで、閉まるところまで手で動かして」

お稽古が終わると、意識がもう次へ向いてしまい、そんなことを忘れてしまうこともあります。

でも、書を習っている時間だけではなく、普段の生活の中でも少し意識してみることで、「最後まで自分の手を使う」「物事の終わりを丁寧にする」という感覚が、少しずつ身についていくといいなと思っています。

これは、必ず身につけなければならないことではありません。
鉛筆をポンと置いたからといって、何か困るわけでもありません。

それでも私は、せっかく書のお稽古に来ているのなら、字を書く技術だけではなく、書を通して身につけられる意識や感覚も一緒に持ち帰ってほしいと思っています。

力を入れる。
力を抜く。
止まる。
動かす。
そして、最後まで自分で動かして終わる。
物事を丁寧に終わらせる。

書には、そんなふうに日常のあらゆるところへつながっていく学びがあると思っています。